廃PV法の本質は“許認可”にある──第三層を市場に変える設計とは何か

「廃PV法の本質は“許認可”にある──第三層を市場に変える設計とは何か」
太陽光パネルの廃棄問題をめぐる今回の制度は、単なるリサイクル促進策ではない。その核心は、廃棄物処理でも資源利用でもない「第三層」を経済の中に成立させようとする点にある。そして、その成否を決めるのが、実は技術でも価格でもなく、「許認可の設計」である。
■ ① 許認可は市場の代替か、前提か
サーキュラーエコノミーにおいて許認可というものは、単なる行政手続ではなく、市場の構造そのものを規定する要素として現れる。従来であれば、廃棄物は許可の世界、資源は市場の世界と、役割が明確に分かれていた。しかし、今回の廃PV法が対象とする領域は、そのいずれにも完全には属さない。市場に任せれば回収されず、規制だけでは効率が出ない。この中間に位置する第三層においては、許認可は単に安全を担保するためのものではなく、誰が参入し、どの規模で事業を行い、何を価値とみなすかを決める仕組みとして機能する。
したがって、許認可の設計はそのまま産業構造の設計であり、同時に市場の設計でもある。広域的な認定制度を導入すれば集約型の産業が生まれ、地域ごとの許可を維持すれば分散型の構造が残る。また、認定の基準がどこに置かれるかによって、何がリサイクルとして評価されるかも変わってくる。この意味で、許認可は単なる入口管理ではなく、価値の定義装置である。
しかしこの装置は両刃の剣でもある。過度に厳格であれば市場は閉じ、既得権が固定化される。逆に緩すぎれば、品質の低い事業者が流入し、制度そのものの信頼が損なわれる。さらに危険なのは、形式だけが整い実質が伴わない状態であり、そのとき制度は市場を作るどころか、逆に価値の空洞化を招くことになる。したがって、サーキュラーエコノミーにおける許認可とは、単に規制の強弱の問題ではなく、市場と制度の境界をどのように設計するかという問題にほかならない。
許認可が市場の代替であるのか、それとも市場の前提であるのかという問いは、静的に答えることができるものではなく、時間の中でその役割がどのように変化するかという問題として捉える必要がある。サーキュラーエコノミーが対象とする第三層においては、そもそも市場が成立していないため、初期段階では許認可が流れそのものを決める役割を担う。すなわち、この段階では許認可は明確に市場の代替である。
しかし、その状態が続く限り、価格は形成されず、競争も生まれず、制度は単なる管理装置にとどまる。したがって、重要なのは、この代替としての役割をいかにして前提へと転換させるかである。すなわち、許認可が流れを決めるのではなく、流れが市場の中で形成され、その信頼性と品質を担保する基盤として機能する段階へと移行できるかどうかが問われる。
この転換が実現したとき、許認可はもはや市場の外側にあるものではなく、市場そのものの一部となる。自由な取引は、無秩序の中では成立せず、一定の信頼と基準の上にのみ成立するからである。したがって、許認可とは市場を抑制するものではなく、市場を成立させるための条件でもある。この二重性をどう扱うかが、サーキュラーエコノミーにおける制度設計の核心に位置しているのである。
しかし、この問いはさらに一歩進める必要がある。許認可が市場の代替であるか前提であるかという区別は重要だが、それだけでは不十分である。問題は、その許認可がどのように設計されるかによって、市場そのものがまったく異なる姿になるという点にある。
■ ② 良い許認可と悪い許認可は何が違うのか
許認可というものは、しばしば市場と対立するものとして理解されるが、サーキュラーエコノミーのように市場が自然には成立しない領域においては、むしろ市場を成立させるための前提条件として機能する。しかしその役割は一様ではなく、設計と運用の違いによって、まったく逆の結果を生む。良い許認可は、必要最小限の基準によって信頼性を担保しながら、競争の余地を広く残す。それは市場の土台として機能し、時間とともにその役割を軽くしていく。一方で、悪い許認可は、過度な規制や曖昧な基準によって市場の代わりを務めようとし、その結果として競争を阻害し、既得権を固定化する。
したがって、許認可をどう設計するかという問題は、単なる規制の強弱の問題ではなく、市場を生むのか、それとも市場の代わりになるのかという選択の問題である。サーキュラーエコノミーにおいては、制度が先に市場を作る必要がある以上、許認可は不可欠である。しかし、その役割がいつまでも代替にとどまるならば、市場は自立せず、制度はコストとして残り続ける。重要なのは、許認可を市場設計の道具として使いながら、いかにしてそれを市場の前提へと移行させるかという点にある。その転換が実現したとき、初めてサーキュラーエコノミーは、制度に支えられた状態から、自立した産業として成立することになるのである。
ここで見えてくるのは、許認可は単なる規制ではなく、すでに市場の構造そのものを形作っているという事実である。したがって、次に問われるべきは、許認可をどのように設計すれば市場を育てることができるのか、すなわちそれを「市場設計の道具」として使えるのかという点になる。
■ ③ 許認可は市場設計ツールになり得るのか
廃PV法を本当に意味のある制度にしようとするなら、認定や許可を単なる行政手続として扱ってはならない。ここで問われているのは、廃棄物をどう処理するかという話ではなく、廃棄物と資源のあいだにある第三層を、どうやって経済の中に成立させるかという話だからである。そのとき許認可は、悪いものを排除するだけの装置ではなく、市場を生み、市場を育て、そして最後には市場の前提へと退いていく装置でなければならない。
したがって、良い許認可とは、厳しい許認可でも緩い許認可でもない。必要なところでは厳しく、不要なところでは自由を残し、その自由が無秩序に落ちないように床を張るものである。そして、その床の上で競争が起き、価格が形成され、技術が選ばれ、最終的には制度への依存が弱まっていく。そこまで見通して初めて、今回の廃PV法は単なる処理制度ではなく、循環の市場化を準備する法律になるのである。
廃PV法を“良い許認可”にするには、次のような骨格になる。
第一に、認定は設備主義ではなく成果主義に寄せる。
第二に、総合認定・工程認定・連携認定の三層にする。
第三に、許可緩和の代わりに情報公開を強くする。
第四に、多量排出者計画を市場接続計画として扱う。
第五に、更新時に実績審査を入れる。
第六に、埋立削減と追跡可能性を中核指標にする。
第七に、地場保護ではなく地場参加を設計する。
第八に、制度が軽くなる出口条件を最初から埋め込む。
廃PV法における許認可は、単に廃棄物を適正に処理するための装置ではない。それは、これまで市場が存在しなかった領域に、制度を通じて市場を立ち上げる試みである。そのとき許認可は、抑制のための規制ではなく、構造を設計するための手段へと変わる。そして、その設計が適切であれば、やがて制度は前面から退き、市場が自立していくことになる。問題は、その転換を最初から織り込めるかどうかにある。
(原田幸明)
